第7章 「残るのは、君だけ」
「処刑って……どういうこと?」
思わずこぼれた声に、男は唇をゆがめた。
「……お前、何にも知らないんだな」
「呪術以外の力を持つもんは処刑される。お前の中にいる“悠蓮”と同じ運命を辿るんだよ」
何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
(……今、なんて……? 悠蓮と……同じ……?)
「でもよ、処刑ってのは色々面倒なんだわ。あの五条の坊ちゃんが、うるせーし」
「だからお前は――俺に殺されて、事故死として処理される。上の決定だよ」
その言葉が落ちた瞬間、世界の音が遠のいた。
喉が固まり、声が出ない。
(……殺される……? 私が……?)
胸の奥に、冷たい手が差し込まれたような感覚が広がっていった――。
金属音とともに、錠が外された。
ギィ、と重い音を立てて扉が開き、男が中へ一歩踏み込む。
立ちすくんでいたは、反射的に後ずさった。
「好きにしていいんだよな?」と男が振り返る。
「仕事さえこなして頂ければ、問題ありません」
スーツの男は淡々と応じた。
柄の悪い男が、にやりと唇を吊り上げてこちらを見やる。
「ガキは興味ねぇけど……お前、結構可愛い顔してんじゃん」
「……こないで!」
さらに後ずさるが、狭い部屋ではすぐに壁際へ追い詰められる。
「どうせ死ぬんだ……楽しいことしてから、殺してやるよ」
吐息まじりの声と同時に、男の手がジャージにかかる。
嫌な音を立てて布が裂け、冷たい空気が肌を撫でた――。