第27章 「花の匂いは誰のもの**」
「大丈夫」
頭に手が乗せられて、ぐっと引き寄せられた。
先生の胸の中にすっぽりと閉じ込められる。
鼻先をかすめる先生の匂いが、さっきよりずっと近くなって。
耳元では、先生の規則正しい鼓動が聞こえる。
「たとえどんな呪いでも運命でも、関係ない。……ぜーんぶ僕がぶっ壊してあげる」
回された腕に、さらに強く力がこもった。
「……何があっても絶対に、を手放したりしないよ」
ひどく切実な響き。
でも、その声の奥に、揺るがない覚悟みたいなものが滲んでいる気がした。
(……先生?)
顔を上げて理由を聞こうとしたけれど。
でも、できなかった。
京都から帰ってきた先生の言葉の端々に、『何か』が重くのしかかっている気がしたから。
それが何なのかは、今の私にはわからない。
ただ、私を閉じ込める腕の強さだけが、どうしようもなく苦しくて、あたたかい。
「……約束、ですよ」
震える声でそう返して、私も先生の背中に腕を回す。
怖くても、揺らいでも、私にはこの人がいる。
最強で、意地悪で、どうしようもなく大好きな先生。
この腕の中にいる限り、私は私でいられる。
先生の匂いを胸いっぱいに吸い込んで、そっと目を閉じた。
どれくらい、そうしていただろう。
ふと、先生が首筋に顔を寄せてくる気配がした。
首筋に触れる先生の吐息が熱くて、びくっと肩が跳ねてしまう。
でも、すぐに先生は私の首元から顔を離すと、少しだけ眉を寄せて首を傾げた。