第27章 「花の匂いは誰のもの**」
「僕が京都でのことばっかり考えてた間に、そんな不純異性交遊が行われていたなんて!」
「せ、先生っ! ストップ!」
私は揺れる頭のまま、その腕を掴んだ。
「私の話、ちゃんと聞いてましたか!?」
抗議するように睨みつけると。
先生は私を揺さぶる手を止めて、むすっとした顔で口をへの字にした。
「聞いてたよ。宿儺がなんちゃら、悠蓮がなんちゃらって話でしょ?」
「……なんちゃらって」
全然聞いてないじゃん。
私は先生の胸元をぺちっと軽く叩いた。
「宿儺の言うことだって、無視できないです」
「それに……私、このまま悠蓮と混ざって……いつか、本物の魔女に、いや……バケモノなっちゃうかもしれないんですよ!?」
声が、少しだけ震えた。
自分でも口にするのが怖かった、最悪の想像。
なのに……先生は、まったく心配する様子も見せない。
むしろ、私の頬を両手でむにゅっと挟み込んで、ケラケラと笑った。
「うーん。なら、すっごく可愛い魔女になるだろうねぇ」
「……っ、ひょういう話じゃなくて!」
挟まれた頬のせいで、変な声が出る。
(この人、全然本気にしてない……)
私が必死に話しているのに、先生は「どんな魔女かなー。魔女の宅⚪︎便みたいな? そしたら、僕専用の宅急便屋になってもらお」なんて、呑気に私の顔をこねくり回している。
「しぇ、んせいっ、ほんとにもう……」
これ以上はちゃんと怒ろうと思って、先生の手を振り払おうとした。
けれど、その手のひらがふいにやさしくなる。
頬を包んだまま、輪郭をなぞるようにそっと撫でられて。
さっきまでのふざけた笑顔は、もうどこにもなかった。