第27章 「花の匂いは誰のもの**」
「虎杖くん。宿儺って、千年前の呪術師なんだよね?」
「え? ああ、そうだけど……」
虎杖くんが少し戸惑ったように頷くと、伏黒くんの眉がぴくりと動いた。
「宿儺が、悠蓮のことを知ってるって言いたいのか?」
「うん。……悠蓮のことを知っていないと、私を見てそんなこと言わないんじゃないかと思って」
私は、虎杖くんの目を真っ直ぐに見つめた。
「だから……虎杖くん。私、宿儺に聞いてみたい」
虎杖くんが、困ったように眉を下げる。
「うーん……の気持ちはわかるけどさ。あいつの言うこと、あんまり信用しない方がいいぞ」
「そうよ。あんた、自分が何言ってるかわかってんの?」
野薔薇ちゃんが、すかさず口を挟んだ。
その声は、私を窘めるように少しだけ厳しい。
「素直に答えてくれるような相手じゃないわ」
伏黒くんも、腕を組んで続けた。
「ああ。それに……いくら虎杖が抑え込んでると言っても。五条先生がいない状況で、宿儺に主導権を渡すのは危険すぎる」
三人の意見は正論だった。
みんなが、私のことを本気で心配してくれているのが伝わってくる。
少しでも悠蓮について知っておきたいと思ったけど、みんなを危険に晒すわけにはいかない。
(……そんな簡単じゃないか)
俯きかけたその時、虎杖くんがぽんと手を打った。
「なぁ、。宿儺じゃなくてさ、『悠蓮』本人に直接聞けば?」
その言葉に、はっとする。
言われてみれば、その方が早いし確実なんだけど……
「でも、私から呼びかけても何も反応ないの。夢で、彼女の記憶を見ることがあるだけで……」
自分の手のひらを見つめる。
(今朝の夢の中の、あの白髪の男の子もそうだった)
彼女はいつも一方的に夢に現れてくるか、私が彼女の記憶を見てるだけだ。
「……そういや」
虎杖くんが急に何かを思い出したように、ぽつりとこぼした。
「俺、宿儺の昔の記憶なんて見たことないな」