第27章 「花の匂いは誰のもの**」
(……今の、私の記憶じゃない)
ってことは、あれは悠蓮の記憶。
あの白髪の男の子は、誰なんだろう。
でも、あの蒼い眼は――六眼、だよね。
もしかして、前に先生と一緒に見つけた冊子に出てきた、千年前の五条家の当主……?
『お前、花の匂いがするな』
少年の言葉が、頭の中で反芻する。
パジャマの襟元を引っ張って、鼻を近づけた。
すん、と小さく吸い込んでみる。
(……うーん)
するのは、いつも使っている柔軟剤の匂いだけ。
そもそも香水もつけていないし、自分では自分の匂いなんてよくわからない。
(だいたい、花の匂いって……)
あれ。
このセリフ、前にもどこかで聞いた気がする。
(……誰かに、言われなかったっけ?)
記憶の糸を、手探りでたぐり寄せる。
いつだったっけ。
誰に言われたんだっけ。
心臓の音が、少しずつ速くなっていく。
(あの廃村で……虎杖くんが怪我をして、私が……)
思い出した瞬間、指先がすっと冷たくなった。
『そこの花の匂いのする女の命くらいは助けてやってもいいぞ』
呪いの王――宿儺だ。
夢の中の少年と、宿儺。
二人とも、花の匂いがするって言った。
ただの偶然だとは思えなかった。
花冠の魔導の白い花。
悠蓮という存在には、いつも必ず“花”が関係している。
(……聞いてみる価値はあるかも)
布団を押し退けて、ベッドから降りる。
私は朝の準備をするために、急いで洗面所へと向かった。