第26章 「愛ほど歪んだ呪いはない」
「敵は、五条家の結界をいとも容易くすり抜け、この場所を掘り返した。魔導に深く通じた者の仕業だ」
「……」
「その狙いが何であれ。……あの娘はもう、悠蓮の器として引き返せぬ運命にあるぞ」
その言葉が、重くのしかかる。
僕は、気づけば拳を強く握りしめていた。
(……ふざけんな)
の運命は、のもんだろ。
「関係ないね」
そう吐き捨てるように言うと、じいさんは懐から一枚の古びた紙切れを取り出した。
縁が不自然にちぎれ、茶色く変色した和紙。
「……墓の前に、これだけが残されていた」
差し出されたそれを受け取る。
指先に触れた紙の質感に、はっきりとした見覚えがあった。
「これ……」
書庫で見つけたあの古い冊子。
何者かによって、意図的に破り捨てられていたあのページだ。
「盗んだ奴が、わざと置いていったって言いたいの?」
僕はその紙をひらつかせると、じいさんは目を伏せた。
「ああ。賊が、我々に……いや、現当主であるお前に、これを読ませるために残したとしか思えん」
「賊の目的は分からん。だが、……星の巡りは変えられん。お前もいずれ、己に課せられた因果を知るだろう」
じいさんはそう言って、僕に背を向けた。
石段を登っていくじいさんの足音が、少しずつ遠ざかっていく。