第26章 「愛ほど歪んだ呪いはない」
「できるわけがなかろう。悠蓮という存在自体が、五条家にとって隠蔽すべき最大の禁忌。その封印が破られたなどと、誰が表沙汰にできる」
保身か、くだらない。
……いや。
こんなことが上に知られたら、の処遇がどうなるかもわからない。
だけど、わざわざ五条家の最奥の結界を破ってまで盗み出し、悠蓮に執着する人間なんて、一人しか思い浮かばなかった。
諏訪烈。
が以前、五条家の敷地内であいつに会ったと言っていた。
あの時、もう何かを掴んでいたのか。
「で? その持ち去られた『あるモノ』ってのは、一体なんなのさ」
「……私にも、わからん」
「なんだよ、それ」
これでも前当主かよ。
ったく、歴史だけは長い家ってのも考えものだな。
「悠蓮と共に何が埋められたのか。それを知るのは、封印を施した靖厳様ただ一人だ。我々にすら、その正体は伝えられておらん」
「ただ、古い記録に一行だけ、こう残されている」
じいさんは、墓跡の文字に薄く積もった土埃を、指先でそっと払い落とした。
「『それは、魔女がこの世に残した【執】の種子(しゅうじ)である』……とな」
……執の、種子?
執着。
あるいは未練という意味か?
どっちにしろ、ろくなものじゃないのはわかる。
諏訪烈は、ただの魔導を利用しようとしているだけじゃない。
その種子で、何をするつもりだ。
に使うのか。
それとも、あの白い花と繋がっているのか。
「悟」
じいさんの嗄れた声が、冷たい墓地の空気に響いた。