第26章 「愛ほど歪んだ呪いはない」
バチッと静電気のような音が鳴り、何もない空間にぽっかりと暗い穴が開く。
高度な結界によって完全に隠蔽されていた、地下へと続く石段だった。
「……ここから先は、五条家でも限られた者しか入れないことになっている」
そう言って、じいさんはカビと古い土の匂いが這い出してくる暗闇の階段へと足を踏み入れた。
僕すら知らなかった、一族の隠し場所。
(一体、何を隠してるんだ)
階段を降りると、湿った冷気が足元からじわじわと這い上がってくる。
しばらく歩くと、ふっと視界が開けた。
薄暗い空間の中心に、古びた墓石がひとつ。
じいさんはその墓石の前で立ち止まった。
「……悠蓮の墓だ」
その名前に、思考が一瞬だけ止まった。
千年前、呪術界で異端者として記された存在。
そんな人間を、しかもこんな厳重な結界で隠してまで祀るなんて――
やっぱり、僕の睨んだ通りか。
悠蓮は処刑なんてされていなかった。
僕は、じいさんの背中越しにその古い石を睨みつけた。
「で、どうして五条家に悠蓮の墓があるわけ?」
「……八代目当主、靖厳様のご指示だ」
靖厳って……
と一緒に京都へ来た時、書庫で見つけたあの古い冊子。
悠蓮の記録を密かに編纂し、厳重に封印して隠していた張本人。
「その靖厳様が、悠蓮を匿ってたって言いたいの?」
僕の問いに、じいさんはこっちを振り返った。
「……その真意は、今となっては誰にも分からん」
「ただ『この墓の存在は、何人の目にも触れさせてはならぬ』と、固く命じられてきたのだ」