第26章 「愛ほど歪んだ呪いはない」
「どーりで。上の連中に、が悠蓮の器だってバレるのが早かったわけだ」
「あんたが、情報を流してたのか」
目の前の老人を真っ直ぐに睨みつける。
だが、じいさんは何も答えない。
肯定も否定もしないその態度が、何より雄弁だった。
「悠蓮について、何を知ってる?」
隠しきれない苛立ちを込めて問い詰めると、じいさんは目を閉じ、静かに口を開いた。
「……すべては、『星』の巡りだ。ついてこい、悟」
じいさんは膝に手をつきながら立ち上がり、僕に背を向ける。
そのまま縁側へ出ると、庭石を伝って、暗い敷地の奥へ向かって歩き出した。
僕は小さく舌打ちして、スマホをポケットに突っ込み、その背中を追った。
♢
向かう先に、何があるのか。
じいさんは、広く入り組んだ庭をどこまでも奥へ進んでいく。
(……どこに行くつもりだ)
やがて、木々の隙間から開けた場所に出た。
月明かりの下に、無数の石の柱が並んでいるのが見える。
五条家の敷地の最奥にある、一族の墓地。
古い苔むした墓石から、真新しいものまでひっそりと佇んでいた。
「……こんな夜更けに、ご先祖様のお参り?」
僕は歩幅を緩めず、わざとらしく冗談を投げた。
けれど、じいさんは振り返らない。
(無視かよ……相変わらず、ノリ悪いねぇ)
ずらりと並ぶ墓石のあいだを抜け、さらに奥へ進んでいく。
やがて、ひときわ古く、刻まれた文字さえ削れて読めない巨大な石塔の前で、じいさんはようやく足を止めた。
じいさんは石塔の裏に貼られた、黒ずんだ古い呪符に手を触れた。
それから、聞いたことのない呪詞を低く唱える。
次の瞬間、目の前の空気がぐにゃりと歪んだ。