第26章 「愛ほど歪んだ呪いはない」
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『なるほどね』
電話の向こうから、先生の少し低い声が聞こえた。
自分の部屋のベッドに座って、私は先生に今日あったことを報告していた。
「……はい。須和さんは、あの白い花が、消えてしまう魂の代わりになってるんじゃないかって……。目的は、死者の蘇生だろうって言ってました」
『死者の蘇生、ねぇ。硝子が鼻で笑う顔が目に浮かぶよ』
電話口で、先生が小さくため息を吐く音がする。
『でも、あの白い花は魂の代用品か。確かに、それならあの異常な状態も筋は通るね』
『……とはいえ、花に魂の代わりをさせるなんて、さすがに無茶があるでしょ』
『現に、あれだけじゃ死者は蘇ってない。……まだ何か、決定的に足りてないんだと思う』
「足りないもの……」
そう呟いた自分の声が、かすかに掠れていた。
もし、それに私の力が関係していたら――
須和さんの話を聞いた時よりも、ずっとはっきりした輪郭を持って、その不気味な企みが、すぐ目の前まで迫ってくる気がした。
(……もし、全てが揃ってしまったら)
そこまで考えて、ぞくりと背筋が冷えた。
『……ところで?』
ふいに、先生の声のトーンが変わった。
『から見て、その須和清仁って男はどんな感じだった?』
「須和さんですか……?」
私は視線を落として、今日のことを思い出す。
どんな人、か――
「……思ってたより、話しやすい人でしたけど」
『へぇ、かっこよかった?』
「……え?」
『だーかーら。テレビにもよく出てる有名人でしょ? 実際会ってみてどうだったのかなーって』
口調はいつものように軽いけれど。
語尾が少しだけ伸びて、どこか拗ねたような響きが混じっている。
(……これは、答え方を間違わないようにしないと)
この前も、「僕、あいつきらーい」なんて言っていたのを思い出す。