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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第7章 「残るのは、君だけ」


***


寮へ続く渡り廊下を歩く。
夕陽はもう沈みかけ、校舎の影が長く伸びている。


(……伊地知さん、来なかったら……)


思わず足が遅くなる。
何が起きたのか、何をされそうだったのか――答えは出ない。
ただ、五条のあの近さと、低い声が耳の奥に残っている。


突然背後から、冷えた声が落ちてきた。



「――さん、ですね」



振り返る。
夕闇の中、黒いスーツに身を包んだ男が立っていた。
背筋はまっすぐ、ネクタイひとつ緩んでいない。
逆光で表情は影に沈んでいるのに、笑っていない口元だけがはっきり見えた。



「……はい、そうですけど」



返事をした瞬間、男は一歩近づき、影がさらに濃くなる。



「今から、一緒に来ていただきたい」

「……え?」



の胸がわずかに波打つ。
そのとき、訓練場を出る直前に聞いた声が、脳裏に鮮やかによみがえった。


――。僕がいない間は高専から出ないこと。小太刀も、肌身離さず持ってて


理由も告げられず、けれど妙に真剣だった声。


(……どうしよう)


足が、自然とその場に縫い付けられたように動かない。


男は一瞬だけ視線を伏せ、次に顔を上げたときには、薄い笑みのようなものが口元をかすめていた。



「……本当に、いいんですか?」

「……何が、ですか」

「あなたの力のことで、五条悟に――これ以上迷惑をかけたくないでしょう」



その一言で、呼吸が止まる。
胸の奥が冷たく締め付けられ、足先までその感覚が落ちていく。


(……呪術じゃない、私の力のこと……)


高専で、それを快く思わない者がいることを、本当は知っている。
表立っては言われなくても、視線や態度で感じ取ってきた。
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