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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第7章 「残るのは、君だけ」


放課後の訓練場。
夕陽が傾き、窓の格子が床に長く影を落とす。
熱を帯びた空気の中、木の床を踏む乾いた音と、刃が空気を切る音だけが響いていた。



「肘、もう少し締めて――そう。……そこで止める」



短く「はい」と返した彼女は、形と呼吸に意識を沈めている。
背中越しでも、それが分かった。


手を伸ばし、肘に軽く触れる。
その瞬間、の肩がわずかに揺れ、半歩、自然を装って距離を取った。


そのわずかな退き方に、五条は眉を動かした。


わずかな間。
ほんの数センチ離れただけなのに、胸の奥で小さな棘が刺さるような感覚――。


(……なんで?)


五条は一拍置き、再び間合いを詰めた。
意図的か、無意識か、自分でも判別がつかないまま――
ただ、この距離を許したくない、という衝動だけが静かに熱を帯びていく。




「もう一度。肩の力、抜いて」



呼吸が触れそうな距離。
彼女はまっすぐ前だけを見て、こちらを見ようとしない。


その横顔を見ながら、心の奥で得体の知れない焦燥がざわついた。
の視線の先に自分以外の何かが映っている――
そんな気がして、妙に落ち着かない。





何度目かの打ち込みを終え、刀を下ろす。



「……今日はここまで。頑張ったね」

「あ、ありがとうございました」



返事とともには刀を収め、壁際のタオルとドリンクへと向かう。
手早く片付けを始める背中が見える。


その後ろへ自然と歩み寄る。
振り返らなくても、こちらの存在には気づいているはずだ。
それでも距離を詰めると、背中に視線が届くような熱が宿る。



「……ねぇ、なんでさっき避けたの?」



自分でも抑えたつもりの声が、夕暮れの静けさを裂いた。
の手が止まり、タオルの端を握る指がかすかに震える。



「……そんなこと、ないです」



背を向けたままの返事。
けれど、壁と自分の影に挟まれて、彼女にはもう逃げ道がない。



「ふーん」



短く吐き出すように言い、片手を壁につく。
乾いた音が夕闇に響く。


さらに距離を詰め、真っ直ぐに視線を向ける。
目隠し越しでも、彼女の全身がこちらの気配に覆われていくのがわかる。
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