第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
「僕のベッド、使っていいよ」
そう言って、先生は部屋のベッドを顎でしゃくった。
(先生の、ベッド……)
それを見た途端、合宿の初日にこの部屋で起きたことが、ぶわっと頭の中に蘇ってきた。
あの日、私はあのベッドに押し倒されて。
先生の大きな身体に組み敷かれて、何度も、何度も……。
(っ……わぁ、だめ……!)
一気に顔に熱が集まるのがわかった。
どうしよう。
今夜も、またあんな風にされたりする?
そんな想像がよぎっただけで、心臓がうるさいくらい鳴り始めた。
「あの……先生は?」
おずおずと見上げると、先生はわざとらしく大きなため息をついた。
「僕は、まだ仕事が残ってるんだよね」
そう言って、部屋の隅にある小さなデスクを指差す。
そこには、開かれたままのノートパソコンと、書類がいくつか積まれていた。
「こんな時間まで残業なんてさ。ほんと、やんなっちゃうよ」
「……そうですか」
(なんだ。……お仕事か)
ほっとしてるはずなのに。
でも、なんで私ちょっとだけ、がっかりしてるんだろう。
「あの……お邪魔だったら、私……」
「んーん。気にしないで、ゆっくり寝なよ」
「じゃぁ……お言葉に甘えて」
抱えていた枕をぎゅっと握り直して、そっとベッドの端に腰を下ろした。
マットレスが、体重に合わせて沈み込む。
真ん中を避けて、一番端っこの隅の方へと身体を丸めた。
シーツを引き上げると、ほんのり先生の匂いがした。
「そんな端っこで寝たら、落っこちるよ」
顔を上げると、いつの間にか先生がベッドのすぐそばに立っていた。
伸びてきた大きな手が、ぽんと軽く頭を撫でる。
「でも……」
「僕、まだ起きてるから。真ん中で寝な」
そう言って、先生はふっと微笑んだ。
その顔を見たら、我慢していた気持ちが溢れそうになる。
(もう少しだけ……)
気づけば、手が勝手に動いて。
ベッドの端から少しだけ身を乗り出して、先生のシャツの袖口を摘んでいた。
先生が、ちらりとその手元に目を落とし、面白がるみたいにゆっくり目を細める。