第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
「……なに?」
声にならないまま固まった私を見て、先生が少しだけ顔を近づけた。
「一緒に寝てほしいの?」
「っ……!」
顔が一気に熱くなる。
(バレてる……)
そんな私を見て、先生はくすくすと喉を鳴らした。
そのままベッドの縁に深く腰を下ろした。
「素直にそう言えばいいのに、この甘えん坊」
先生は私の両脇に手をついて、そのまま上から覆いかぶさって。
そして、わざと体重をかけてきた。
「わっ……」
シーツ越しに伝わる重み、体温。
先生の匂いに、いっぺんに包まれる。
「ちょっと、先生……っ、重い〜」
苦しいはずなのに、なんだか可笑しくて。
思わず声を上げて笑ってしまった。
「はは、潰れちゃう?」
先生は楽しそうに笑うと、私の上から体をどかして。
そのまま、ごろんと隣へ寝転がった。
「え……あの、お仕事は?」
「もういいや。伊地知がなんとかするでしょ」
あっさりと残業を放棄した先生は腕を、私の首の下へと滑り込ませた。
ぐいっと引き寄せられて、先生の胸の中にすっぽりと収まる。
(ひゃぁ……)
先生の腕枕。
少し硬い腕の感触と、規則正しい心臓の音がすぐ耳元で聞こえた。
「……いいんですか?」
「が『一緒に寝て』って誘ったんでしょ?」
「誘ってないです……ただ、ちょっとだけ……」
「はいはい」
先生の手が、私の背中を一定のリズムで優しく叩き始める。
まるで、小さな子供を寝かしつけるみたいに。
「じゃあ、寝るまでなんか話してよ」
「……えぇ?」
突然の無茶振りに、思わず顔を上げた。
蒼い瞳が、面白そうに私を見つめている。
(話してって言われても……)
こんな状況で、気の利いた話なんて急に思いつかないよ。
頭の中は、先生の匂いと体温と。
心臓の音で、いっぱいいっぱいなのに。