第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
「えっと……うーん……じゃあ……」
視線を泳がせて、必死に頭を回転させる。
真希さんたちの寝言の話は先生知ってるし。
呪霊の話は、なんだか空気が重くなっちゃいそうだし。
「……もし、願いを一つだけ叶えてくれる呪物があったら、先生は何をお願いしますか? あ、でも一個だけです」
口にしてから、自分でもちょっと幼すぎたかもと思った。
先生は少しだけ目を丸くして、それから肩を震わせて笑った。
「なにそれ。どんな呪物だよ?」
「今日、野薔薇ちゃんたちとそういう話になって。たまには、世界に優しい呪物があってもいいよねって」
「へえ。で、は何て答えたの?」
背中を叩いていた手が、今度は髪を梳く動きに変わって。
その指先が心地よくて、なんだか少しだけ瞼がとろんとした。
「私は……」
(……先生の隣に、ずっといられますように)
本当は、そう願っていた。
でも、それをみんなの前で言うのは恥ずかしくて。
「明日も明後日もずっと、みんなで美味しいご飯が食べられますようにって」
「平和だねぇ。でも、らしい」
「ちなみに、野薔薇ちゃんは『限度額なしのブラックカード』で。真希さんは『自分の願いは自分で叶えるから要らねぇ』でした」
「虎杖くんは『一生分の焼き肉!』って言ってて、伏黒くんには『お前はそればっかりだな』って呆れられてましたけど」
「あははっ、みんなブレないね」
みんなの顔を思い出しながら話していると。
なんだか、すごく平和な時間だなって、改めて思う。
「……じゃあ、先生は?」
聞き返すと、少しだけ間があった。
耳元では、先生のとくとくと規則正しい心臓の音が聞こえている。