第23章 「可惜夜に眠る 後編①」
「君がやってるのは、二人が命懸けで貫いた愛を、勝手に罪に書き換えて、泥を塗るようなもんだよ。……それこそ、お父さんとお母さんに失礼でしょ」
その言葉は、優しくなんてなかった。
むしろ、私のこれまでの数年間を真っ向から否定するような、厳しい正論。
でも。
「君のせいじゃない」と言われるよりもずっと強く、私の心を揺さぶった。
「いい? 」
先生の大きな手が、私の頬を包み込む。
泣き腫らして熱を持った肌に、少し冷たい指先が触れた。
「呪術師である僕らは、普通の連中よりずっと『死』ってやつが身近にある。いつ誰がいなくなるかもわからない世界だ」
先生の視線が、私の心のずっと奥、底のほうまで見透かすように注がれる。
「……だからこそ。残された僕たちが、誰かの死を忌まわしいものにしちゃいけない。愛する人の最期を、悲劇とか罪悪感とか……呪いにすり替えちゃダメなんだよ」
先生の親指が、私の頬の涙の跡をゆっくりとなぞった。
「は、もう自分でわかってるでしょ」
「……え?」
「だから、あの犬の骨を……わざわざ届けに行ったんじゃないの」
先生の言葉に、小さく肩が揺れた。
(……あ)
そうだ。
私は、お姉さんに「自分のせいでカイザーくんを死なせた」って、一生自分を呪ってほしくなかった。
悲しくても。
真っ直ぐに愛されていた事実を知って、前を向いてほしかったから。
「君が背負うべきなのは、罪なんかじゃない」
「……二人が君に遺した、バカみたいに重くて、あったかい愛だけでしょ」
「それを呪いにするか、力にするかは……次第だよ」