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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第23章 「可惜夜に眠る 後編Ⅰ」


廊下から、隣のクラスの先生が声を張り上げて教室に飛び込んできた。



『震源は三陸沖、マグニチュード7.9です!』

『ここの震度は……っ、震度6強だって!』



その言葉に、教室にいた大人たちの顔色がさっと変わった。
震度6強。
子供の私でもわかるくらい。
それは、異常で恐ろしい数字だった。



『みんな、落ち着いて! 運動場へ避難して――』



先生が指示を出しかけた、その時だった。


街中から、鼓膜を破るようなけたたましいサイレンの音が鳴り響き始めた。
防災無線のスピーカーから、悲鳴のような、切羽詰まった声が響く。



『大津波警報が発令されました! 宮城県沿岸の予想高さは、6メートル……っ! ただちに高台へ避難してください』



廊下の向こうで、先生たちが声を張り上げて誘導を始めている。


(これから、どうなるの……?)


お母さんが、急ぐように私に防災頭巾を被せながら言った。



『、先に避難所へ行きなさい』

『お母さんは、お父さんの様子を見てくるからーー』



私は、家に帰ろうとするお母さんの手を、両手でぎゅっと握りしめた。



『やだ! だったら、わたしも一緒に行く!』

『だめ。お家が今どうなってるかわからないし、危ないの』

『やだっ、おかあさんと行く!』

『、お願いだから言うこと聞いて。先に避難してて』



お母さんはミホちゃんのお母さんに私を預けると、私と同じ目線までしゃがみ込んで、にっこり笑った。



『すぐお父さん連れて戻るから、いい子で待っててね』



今なら、あの言葉の重さがわかる。


(どうして、お母さんは“戻る”なんて言ったんだろう)


津波が来るって、防災無線はあんなに叫んでいた。
高台へ逃げろって、先生たちも声を張り上げていた。


それなのに、お母さんは大丈夫って。
すぐ戻るって。


(……私が不安にしてたから、かな)


怖がらせたくなかったのかもしれない。
安心させたかったのかもしれない。
それとも、本当に――少しくらいなら間に合うって、思ってしまったのかもしれない。


私に背を向けて、教室の外へ走っていくお母さんの姿。
それは今でも、昨日のことみたいに思い出せる。
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