第23章 「可惜夜に眠る 後編①」
『お父さん、まだぁ?』
『もうすぐ着くはずなんだけどね。どうしたのかしら?』
お母さんが、何度も廊下の方を気にして時計を見る。
私の発表の順番は、どんどん近づいていて。
不安と焦りで、私はすっかり拗ねてしまった。
『お父さんがいないとやだ。二人揃ってないと、お手紙読まない!』
『、わがまま言わないの。お父さんも急いでるんだから』
『やだ! お手紙もないから上手くできない! お父さん呼んできて!』
泣きそうになりながら駄々をこねる私に、お母さんは「もう……」と困ったように眉を下げた。
その時だった。
地の底から響くような、不気味な地鳴りが聞こえて――
(……え?)
次の瞬間。
下から突き上げるような衝撃がきて、教室全体が大きく跳ねた。
立っていられないほどの激しい揺れが、一気に襲ってくる。
ガシャーンと窓ガラスが割れる音がして。
後ろのロッカーから、ランドセルや道具箱が次々と床に落ちて散乱する。
クラスの誰かの、短い悲鳴。
『みんな、机の下に入って!!』
先生の、切羽詰まった叫び声。
私はお母さんに突き飛ばされるようにして、自分の机の下に押し込まれた。
(こわい……!)
床にしがみついていても、体が勝手に弾んでしまう。
揺れはいつまで経っても、おさまらなくて。
校舎全体が、メキメキと軋む嫌な音を立て続けていた。
どれくらい経ったのか。
ようやく、大きな揺れが小さくなった時。
教室の中は、物が散乱してぐちゃぐちゃだった。
お母さんが這うようにして私に近づいて、ぎゅっと抱きしめてくれた。
『、怪我はない? 大丈夫?』
『う、うん……っ』
お母さんは、自分の携帯電話を取り出した。
画面を何度もタップしている。
『全然繋がらない。電話もネットも、完全にパンクしてるわ……』
そう言って、お母さんは青ざめた顔で、携帯をポケットに押し込んだ。
『……お父さん、大丈夫かな』
お母さんは一瞬だけ黙って、それから私の肩を抱き寄せる。
『大丈夫よ。お父さんだもん』