• テキストサイズ

【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第23章 「可惜夜に眠る 後編①」


(……言わない方が、いいのかもしれない)


本当のことを話したら。
お姉さんは、もっと自分を責めるかもしれない。
自分のせいで、カイザーくんが死んだんだって。
今よりもっと深く、傷ついてしまうかもしれない。


言葉が、喉の奥に重たく引っかかった。
でも。


『私が待っててあげないと、あの子、帰ってこれないじゃん』


今朝、笑ってそう言ったお姉さんの顔が浮かんだ。
三年間、自分を責めながらも。
それでも毎朝、帰ってくるかもしれないって、カイザーくんを待ち続けていた。


だったら、ちゃんと伝えなきゃいけない。
私が見た、あの子の記憶を。



「あの日、泣いてるお姉さんを見て……」



そこまで言って、涙がこぼれそうになる。
でも、私が先に泣いちゃダメだ。
小さく息を吸って、震えそうになる声をどうにか押し出した。



「カイザーくん、お姉さんを裏切った婚約者さんのものを、遠ざけたかったんだと思います。……もう、お姉さんに悲しんでほしくなかったから」

「え……」



お姉さんの唇が、かすかに震える。



「首輪が外れた時……そのネックレスを口にくわえて、家を出たんです」

「どこかに隠そうとして……たどり着いたのが、あの廃ビルで」



暗い瓦礫の中を、必死に歩いていた小さな背中が、また脳裏に浮かぶ。



「でも……」

「隠し終わって、家に戻ろうとした途中で……瓦礫が落ちてきて……っ」



静寂が、玄関に降りた。
お姉さんは、目を見開いたまま。
瞬きすら忘れたように、ただ私の顔を見つめていた。



「……私の、ために?」



私は、黙って深く頷いた。



「私を置いて逃げたんじゃ、なくて……」



お姉さんの視線が、ゆっくりネックレスに落ちる。
そして、その隣の泥だらけの首輪に。
白く乾いた、小さな骨に。
/ 687ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp