第23章 「可惜夜に眠る 後編①」
巨大な呪霊の体が、ふわりと光の粒子になって解け始める。
何千、何万という真っ白な光の粒が、天井の抜けた廃ビルから、空へと立ち昇っていく。
まるで、光る天の川が――すぐ目の前に流れ込んだみたいに。
眩しい極大の光が、廃ビル全体を優しく白く包み込んだ。
(……)
真っ白だった視界が、ゆっくりと元の色を取り戻していく。
あんなにフロアを埋め尽くしていた、呪霊の群れも。
肌を刺すような、重たくて嫌な空気も。
今はもう、欠片も残っていなかった。
帳も解けて、
ぽっかり空いた天井の向こうに、澄んだ青空が覗いていた。
「……きれい」
野薔薇ちゃんが、構えていた釘を下げて息を吐く。
「ああ。……すげぇな」
虎杖くんも空を見上げたまま、呆然と呟いた。
パンダ先輩に支えられた狗巻先輩も、伏黒くんも、真希さんも。
みんな言葉を失ったように、その空を見上げていた。
(……終わった、んだ)
そう思った瞬間。
強張っていた全身から、すとんと力が抜けた。
同時に、今まで感じたことのないような重たい疲労感が、どっと押し寄せて。
膝がカクンと折れて、視界がぐらりと傾いた。
(……あ、やば――)
冷たい地面を覚悟して、ぎゅっと目を閉じる。
でも――衝撃は来なかった。
床にぶつかる直前、強い力で身体が引き寄せられる。
背中と腰をあたたかくて大きな腕が、しっかりと抱きとめていた。
「え……?」
ふわりと、鼻をかすめた匂い。
どこか落ち着いていて、清潔で、少し甘い。
この手の大きさ。
温かさ。
ゆっくりと顔を上げると、そこにいたのは――