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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第23章 「可惜夜に眠る 後編Ⅰ」


床に咲いた花々が、ふわりと重力に逆らって宙へ舞い上がる。
無数の光の花びらが、空中でゆるやかに編み込まれていく。


幾重にも重なり合い、光の線を描きながら。
それは巨大で。
どこまでも美しい『光の花冠』になった。


頭上から私を叩き潰そうとしていた、巨大な呪霊。
そのおぞましい巨体を、光の輪が下から掬い上げるように包み込んだ。



『ギ……』



振り下ろされかけた太い腕が、空中でぴたりと止まる。
花冠からこぼれる光が、呪霊の体を覆っていく。


呪霊から溢れ出ていた悲鳴も。怒りも。
その光に触れるたび、少しずつ温度を落としていくのがわかった。


(痛かったよね……怖かったよね)

(大丈夫。……もう、怖がらなくていい)


心の中でそっと語りかけながら、大きな影を見上げた、その時。


ふわりと揺れた光の中に、小さな女の子の姿が重なって見えた気がした。


(……あ)


真っ暗な避難所の隅。
冷たい床の上で膝を抱えて、震えている女の子。
ひとりぼっちで、ずっと泣きじゃくっていた――八歳の、私だ。
あの日の私は、ずっとそこで止まったままだった。
泣いて。待って。
「いつか二人は戻ってくる」っていう希望を、握りしめたまま。


(……ごめんね)

(ずっと一人にしてたの、私だったね)


震えるあの日の小さな背中に。
そして、目の前で怯えながら迷っている無数の魂たちに。
ゆっくりと両手を差し出した。
そっと抱きしめるように。


深く、静かに息を吸い込んだ。


(……還ろう)


お母さんが教えてくれた、優しい祈り。
悠蓮が残した、千年前の記憶。
ふたつが重なって、言葉が自然に落ちてくる。


それは、静かに歌うような、古い言霊。






「――千代(ちよ)に結ばん、白き輪の」

「独り泣く夜(よ)を、光に還さむ」



紡いだ言葉が、空気を震わせた。
宙に浮かぶ無数の花びらが、声に呼応して眩い輝きを増していく。
輪の内側が、夜明けみたいに白く満ちて――







「――白華浄輪(はなかむり)」

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