第23章 「可惜夜に眠る 後編①」
『お花をまあるく繋げると、どこが終わりかわからなくなるでしょ?』
『……うん』
『命にはいつかお別れがきちゃうけど、こうして輪っかにすれば、「あなたを大好きな気持ちはずっと終わらないよ」「ずっと繋がってるよ」って伝えられるの』
お母さんが、ふわりと目を細めて私を愛おしそうに見つめた。
『だからね、お空に還る人が「自分は一人ぼっちじゃないんだ」って安心して旅立てるように……持たせてあげる、優しいお守りなんだよ』
『なるほどなぁ。そんな意味があるんだな』
お父さんが大きく頷いて、大きな手で私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
『それからね』
お母さんは、今度はお父さんと私を交互に見つめて、優しく微笑んだ。
『残った人たちが、その繋いだ思い出をぎゅっと抱きしめて、また明日から笑って生きていくため。……花冠には、そういう願いが込められてるのよ』
……なんで、ずっと忘れてたんだろ。
冷たい海に攫われて、二人は全部消えてしまったと思ってた。
もう、どこにもいないんだって。
悲しい記憶しか、残っていないんだって。
でも、違った。
お父さんが教えてくれた、あたたかさも。
お母さんが教えてくれた、優しさも。
あの日の花の匂いも。
頭の上の、白い輪っかの重みも。
(お父さんとお母さんは、どこにもいなくなったわけじゃない)
(私の……心の中にいるんだ)
じんと指先から、今まで感じたことがないくらい熱い力が湧き上がってきた。
目を開けると、 巨大な呪霊が私に向かって太い腕を振り下ろそうとしている。
でも、不思議と怖くなかった。
組んでいた手を、ゆっくりとほどく。
手のひらから、真っ白な光が溢れ出した。
一つ、また一つ。
コンクリートの床に眩い光の花を咲かせていく。
光の花びらが、足元をすべるように広がって。
そして、それらが光の線で結ばれ、大きな円を描いていった。
「……!」
伏黒くんが、息を呑む気配がした。