第23章 「可惜夜に眠る 後編①」
「相手の魂に直接触れるの力なら、低級だろうが特級だろうが関係なく、送れるかもしれないってことか」
パンダ先輩の言葉に、みんなの目が一瞬だけ明るくなる。
けれど、野薔薇ちゃんが周囲を囲む無数の白い群れを睨みつけながら、鋭く問いかける。
「理屈はわかったわ。でも、こんだけうじゃうじゃいるやつらを、どうやって一つにするのよ!」
スッと私の前に小柄な背中が立った。
狗巻先輩だ。
先輩は、口元を隠していたネックウォーマーを、ゆっくりと下に引き下げた。
口の端に刻まれた、蛇の目と牙の呪印があらわになる。
その瞳は、覚悟を決めたように、まっすぐ前を見据えていた。
「狗巻先輩……」
伏黒くんが、少しだけ息を呑む。
そして、静かに、けれど強い声で問いかけた。
「……できますか?」
伏黒くんの問いかけに。
狗巻先輩は、迷いなく親指をぐっと立てた。
「よっしゃ!」
パンダ先輩が、大きな両拳をバシッと打ち合わせた。
「じゃあ、このビルにいる呪霊を全部1階に集めて、棘が一つに合体させる。そしたらが送る。……ってことでいいか?」
「しゃけ!」
力強く頷く狗巻先輩。
絶望的だった状況に、はっきりとした道筋が見えた。
(……覚悟、決めなきゃ)
伏黒くんが、素早く階段の方へと向き直る。
「よし。俺と虎杖で、上の階のやつらを下まで集めてくる」
「おうっ! 一匹残らず連れてくりゃいいんだな!」
虎杖くんが、気合いを入れるようにドンッと自分の胸を叩いた。
「」
不意に、真希さんに名前を呼ばれた。
「プレッシャーかけるわけじゃねーけど」
真希さんの声が、薄暗いフロアに響く。
「お前が送れなかったら、そん時はたぶん全員死ぬ」
(全員、死ぬ)
その言葉の重みが、ずしんと響く。
「……腹、くくったか?」
私は、自分の手のひらをそっと見つめた。