第23章 「可惜夜に眠る 後編①」
「おらぁっ!」
虎杖くんは拳を振り抜かず、両腕で呪霊を受け止めて強引に押し返す。
真希さんは大刀の峰で弾き飛ばし、パンダ先輩は掴み上げて後方へと投げ飛ばした。
「動くな!」
狗巻先輩の呪言が響き、最前列の呪霊たちの動きがピタリと停止する。
野薔薇ちゃんも呪霊の足元に釘を打ち込み、動きを牽制している。
みんな、これ以上分裂させないように戦ってくれていた。
(……私も、みんなの期待に応えたい)
目を閉じて、両手を胸の前でそっと組んだ。
自分の内側に意識を向けると、外の騒音が少し遠くなる。
あの夜、港で感じた感覚。
胸の奥で震える、あたたかいもの 。
まるで陽だまりのように、優しくて、懐かしくて 。
涙のように静かに流れてくる光を、指先へと集めていく 。
(……お願い、咲いて)
呼吸をひとつ、ゆっくり吐く。
そっと目を開けると、手のひらから淡い光がこぼれ落ちた。
どこからともなく、白い花弁が舞い始める。
ひとひら、またひとひら。
空中で集まり、波紋のように輪を描いて広がっていった。
「……っ!」
光の輪が、呪霊に触れた瞬間。
不気味に軋んでいた呪霊の体が、ふわりと光の粒子に包まれた。
そして、空へ解けるように消えていく。
(……送れた)
伏黒くんの読み通りだった。
この「魔導」なら、呪霊は分裂しない。
「いけるぞ! このまま押し切れ!」
パンダ先輩が叫ぶ。
私も必死に光を広げ続ける。
けれど――。
階段の奥からは、まだまだ絶え間なく白い群れが溢れ出してくる。
私が送るペースよりも、押し寄せてくる数の方が圧倒的に多い。
「……はぁっ、はぁっ」
息が上がり始める。
指先の光が、少しだけ明滅した。
「おい、これじゃキリがねーぞ!」
呪霊を投げ飛ばしながら、真希さんが焦ったように声を上げた。
隣で、狗巻先輩も「おかか!」と険しい顔で頷く。
「くそっ……殴れねぇの、キツすぎだろ……!」
虎杖くんも、押し寄せる重みに顔を歪めている。
(……どうしよう。このままじゃ、みんなが先に潰れちゃう――)
焦りで指先が震えそうになった、その時。