第23章 「可惜夜に眠る 後編①」
「それはもう試した」
「え……?」
真希さんの言葉に、野薔薇ちゃんが手元の釘を弄りながら顔をしかめる。
「こいつら、分裂した後はそれぞれ独立した呪霊なのよ。だから破片を通して釘を打ち込んでも、数が多すぎて全体にダメージが分散しちゃう」
「そんな……」
「しかも、分散して弱くなった私の呪力をまるごと吸収して、余計に増えやがったわ」
それを聞いた虎杖くんが、あからさまにジト目を向けた。
「……だから、1階だけこんな数多いのか」
「うるさいっ、虎杖!! 私だけのせいじゃないわよっ!」
図星を突かれた野薔薇ちゃんが、顔を真っ赤にして怒鳴り返す。
私はそんな二人を横目に、狗巻先輩を見た。
「あの……狗巻先輩の呪言で、分裂しないようにするとかは……?」
先輩はネックウォーマーに口元を埋めたまま、少しだけ険しい顔をする。
代わりに、パンダ先輩が静かに首を横に振った。
「棘でも難しいだろうな」
「……だめ、ですか」
「ああ。こいつら一つ一つは低級だけど、数が増えきった今じゃ……全部合わせたら、特級呪霊並みだ。反動がデカすぎる」
特級呪霊、並み。
その言葉に、その場にいる全員の空気がピンと張り詰めた。
虎杖くんが、困ったようにぽりぽりと頭を掻いた。
「呪力ぶつけても増えるとか、倒しようがないな」
「……いや、一つだけある」
伏黒くんが玉犬の頭を撫でながら、静かに言った。
「中途半端な攻撃をするから吸収される。なら、分裂する暇すら与えないほどの超火力で、消し飛ばすしかない」
「それって……ビルごとぶっ放すぐらい規格外の力じゃないとと無理ってことか」
(ビルごと、ぶっ放すって……)
そんなこと、できるのは先生だけだ。
私たちじゃ、どう束になっても、この数を一瞬で消し飛ばすなんて不可能だ。
一体、どうしたら……
私にできること、あるのかな。
上の階からは、相変わらず不気味な足音が聞こえてくる。
音が大きくなり、すぐそこまで迫ってきているのが分かった。
みんなの顔に、はっきり焦りが浮かんだ、そのとき――