第23章 「可惜夜に眠る 後編①」
階段を駆け下りて1階のフロアに飛び込むと、そこにはすでにみんなの姿があった。
「お、パンダたちも降りてきたか」
真希さんが、私たちを見る。
その頬にはうっすらと汗が滲んでいて、隣にいる野薔薇ちゃんも、苛立ったように息を吐いていた。
「ちょっと、どうなってんのよあれ! もうビルに入った時の数倍は増えてるわよ」
「……釘崎、落ち着け」
伏黒くんが、階段の踊り場から顔を出しながら静かに言った。
その後ろには、狗巻先輩も続いている。
「俺や狗巻先輩の階も同じでした。玉犬で噛み砕いても、呪言で潰しても、破片からまた新しいのが再生してくる」
「ツナマヨ」
狗巻先輩が短く頷く。
「俺のとこもヤバかった! 殴ってもどんどん増えるから、とりあえず逃げてきた!」
4階に行っていた虎杖くんも、階段からジャンプしてフロアに降り立った。
全員が無事に集まれたことに、少しだけホッとする。
「……悟が用意した任務だしな。そう簡単にはいかないよなぁ」
パンダ先輩が、腕を組んで天井を仰いだ。
頭上からは、カチャカチャと関節が軋むような音が、反響しながら降りてきている。
あの白い群れが、みんなの呪力に反応して1階へ向かって集まってきているんだ。
「でもさ」
虎杖くんが、顎に手を当てて首を傾げた。
「こいつら全部式神だとしたら、大元を叩けばいいんじゃないか?」
「……いや、式神じゃない」
伏黒くんが、暗い階段から目を離さずに言った。
「式神なら玉犬で大元の呪力を追えるはずだが、こいつら自身からしか呪力を感じない」
パンダ先輩が、拳を握り込んだ。
「俺たちの攻撃による呪力を吸収して、それを糧に『分裂』する。そういう術式なんじゃん」
(呪力を吸収して、分裂……)
その言葉に、ハッとした。
この白い呪霊が、元は全部同じ個体だとすれば……
「あ、だったら……野薔薇ちゃんの『共鳴り』が効くんじゃ!」
野薔薇ちゃんの術式なら、切り離された一部を通して、本体に直接ダメージを与えられる。
期待を込めて野薔薇ちゃんを見たけれど。
隣に立つ真希さんが、忌々しそうに息を吐いた。