第23章 「可惜夜に眠る 後編①」
「で、4階は……虎杖、お前は一人でいいだろ」
「ええっ!? 俺だけ一人!?」
虎杖くんが大げさに声を上げる。
真希さんは「文句あんのか」と鋭く睨みつけた。
「い、いえ! 一人で余裕ッス!」
慌てて背筋を伸ばす虎杖くんに、野薔薇ちゃんが呆れたようにため息をついた。
いつもの、みんなのやり取り。
張り詰めていた空気が、少しだけ緩む。
(……よし)
私も、足を引っ張らないようにしなきゃ。
「それじゃ、さっさと終わらせるぞ!」
真希さんの号令に、みんなが一斉に頷いた。
♢
私とパンダ先輩は、階段を上って3階のフロアへ足を踏み入れる。
窓ガラスの割れた廊下。
朝方の白い光が細く差し込んで、足元に長い影が伸びていた。
どこかで水滴が落ちる音が、聞こえてくる。
「、俺の後ろから離れるなよ」
「はいっ」
小太刀を握り直して、パンダ先輩の大きな背中を追う。
廊下の中ほどまで進んだ、その時――
ズルッと天井の隅から、白い塊が降ってきた。
「お、出たな」
パンダ先輩が素早く前に出て、拳を構える。
その呪霊は、マネキンと石膏像を継ぎ接ぎしたような、無機質で不気味な姿をしていた。
顔の半分はのっぺりとしていて、関節はありえない方向に曲がっている。
『ちょぉおおおおだぁぁぁぁい……!!』
軋むような音を立てて、呪霊が飛びかかってきた。
「おらっ!」
パンダ先輩の重い拳が、呪霊の顔面にクリーンヒットした。
ガシャンッ!という陶器が割れるような音を立てて、呪霊の体が壁に叩きつけられ、粉々に砕け散って床に転がった。
「よし。やっぱり大したことないじゃーん」
パンダ先輩が拳の埃を払う。
私もホッと息を吐いて、構えていた小太刀を下ろしかけた。
……けれど。
(え……?)