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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第23章 「可惜夜に眠る 後編①」


「……もしかして、失恋?」


(失恋……?)


頭の中で、その二文字を繰り返す。



『呪術師をやめてもらう』



あの言葉は、「もう先生の隣にはいられない」っていう、決定的な拒絶で。
もう二度と、あの大きな手に引かれることはないんだとしたら。


(……失恋、なのかも)


視線をマグカップに落としたまま、小さく頷いた。



「……はい。そう、かもしれないです」

「そっかぁ……」



お姉さんは深く息を吐き出して、自分のマグカップを両手で包み込んだ。



「実は私も、すっごくひどい失恋をしたことがあってさ」

「え……?」



顔を上げると、お姉さんは天井を仰いで、少し寂しそうな笑いを浮かべた。



「私、婚約までした彼氏がいたのよ」

「親にも挨拶して、一緒に住む家も決めて、さあこれからって時にね。……まあ、見事に裏切られちゃって」



お姉さんは、マグカップの縁を指でなぞりながら言葉を続ける。



「浮気、してたことがわかってね。それも、相手は私の親友」

「さらに最悪なことに、その子……妊娠までしちゃっててさ」

「それでね、二人で私に土下座してくんの」

「『別れてくれ』って。『お腹の子供のためにも、身を引いてくれ』って」



お姉さんは、ふっと自嘲するように笑った。



「え? なんで私が悪者になってんの? ってね。ほんと、笑っちゃうでしょ」



なんだか、映画やドラマみたい。
うまく相槌することもできなくて、私はただお姉さんの話を黙って聞いていた。



「それからはもう、人間不信よ。誰も信じられなくなっちゃって」



お姉さんはハーブティーを一口飲んで、小さく息を吐いた。



「家から一歩も出られなくなっちゃってね。両親も友達も、すごく心配してくれてさ」

「色々と元気づけてくれようとしてるのは、わかるんだけどね。……それが、余計に辛くて」


(……その気持ち、わかるな)


優しい言葉をかけられても、素直に受け取れないあの感覚。
『どうせ、わかるわけない』って、勝手に壁を作って。
他人の優しさを拒絶して、自分から殻に閉じこもっていく苦しさ。
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