第23章 「可惜夜に眠る 後編①」
「えっ、ちょ、ちょっと待って! どうしたの!?」
慌てたように、私の目の前にしゃがみ込む。
「大丈夫!? お腹痛い? それとも、迷子になっちゃった!?」
(迷子……)
高校生なのに、完全に子供扱いされている。
でも、今の私は、本当に迷子と同じだった。
どこに進めばいいのか。
帰る場所がどこなのかも、全部わからなくなってしまったから。
「ちが、う……です……っ」
なんとか答えようとしたけれど、ひっく、としゃくり上げてしまって声にならない。
「わわっ、ごめんね、泣かないで!」
女の人はパニックになったように声を上げて、自分のスウェットのポケットをごそごそと探し始めた。
「えっと、えっと……あ、これ! これあげるから!」
そう言って、私の目の前に差し出されたのは、一粒の飴玉だった。
透明なセロハンに包まれた、まあるい飴。
それを見た瞬間。
(……あ)
朝の光に透けたその飴は。
とても綺麗な、水色をしていた。
透明で、どこまでも透き通っていて。
「あ……う、ああっ……っ」
せき止めていたものが、完全に溢れ出した。
「えっ!? ごめん、飴、嫌いだった!?」
「ちが、ごめんなさ……っ、ちがうの……っ」
膝に顔を押し付けて、声を出して泣きじゃくった。
見ず知らずの人の前で、こんな風に泣き喚くなんて。
みっともない。
恥ずかしい。
頭ではわかっているのに、もう止められなかった。
この飴のように、あの綺麗な蒼を。
もう二度と、私に向けてもらえないかもしれない。
その事実がたまらなく怖くて、苦しくて。
女の人が差し出した青い飴玉を前にして、ただ小さい子供みたいに泣き続けた。