第22章 「可惜夜に眠る 中編**」
「遺体が見つからないっていうのはさ。生き残った側からすると、すごく厄介だよね」
「自分の前に姿を表さないだけで、どこか遠くで生きているかもしれない。残された人間に、そんな希望さえ持たせてしまう」
(……っ)
膝に視線を落としたまま、小さく首を振った。
否定したいのに、うまくできない。
先生の言葉は私のずっと隠していた傷口を、容赦なく抉り開けていく。
「頭では理解してても、心はその残酷な現実を信じたくない」
「『送る』ってことは、その死を受け入れて、終わらせるってことだ。……“まだどこかで生きてるかもしれない”っていう希望を自分で潰すみたいで、怖かった?」
瞬きのたび、涙がこぼれて落ちた。
「……だって、二人、は……」
ずっと心の底に押し込めていた真っ黒な塊が、抑えきれずに溢れてくる。
「私が……あんなこと、言わなければ。津波に巻き込まれることなんて、なかった……っ」
涙が泥の上に落ちて、黒いシミを増やしていく。
「……あんなことって?」
「……何があったの、あの日」
そう言って、先生の大きな手が私の顔に触れた。
親指の腹で、頬にこびりついた泥をゆっくりと拭う。
「……わたし、が……っ」
先生に言っていいのかな。
ずっと蓋をしてきたあの日のこと。
もう、自分じゃ抑えられないの。
この悲しみを、どうしていいかわからないの。
(……お母さん)
目を閉じると、真っ暗な視界の裏に、あの日の記憶が鮮明に蘇る。
けたたましいサイレンが鳴り響いた、あの授業参観の日。