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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第22章 「可惜夜に眠る 中編**」


「虎杖くん! さん! 無事ですかっ?」



伊地知さんが息を切らして駆け寄ってくる。
その顔が、血だらけの虎杖くんを見た瞬間、さっと青ざめた。



「ヒイイイイ、虎杖くん、だ、大丈夫ですか!? 血が、血が……」

「伊地知うるさい。悠仁を早く、硝子のところに連れてってあげて」

「は、はい! すぐに車へ……っ」



伊地知さんが慌てて虎杖くんに肩を貸す。
虎杖くんは痛みに顔を歪めながらも、無理やり口角を上げた。



「伊地知さん、わりぃ……重いっすよね」

「気にしないでください。それより足元、ぬかるんでますからね、気をつけて……」



虎杖くんが、伊地知さんに支えられながら引きずられるようにして歩き出した。
その背中が、ゆっくりと車の方へ遠ざかっていく。


泥の上に、赤い血が落ちて。
もう一つ、落ちて。
それが線になって伸びていくのを、目が勝手に追ってしまう。


(私が……送れてたら、こんなことには)


……違う。
「送れたら」じゃない。
あの瞬間、私は――自分で止めたんだ。
怖くて、終わらせたくなくて。
自分の中の、身勝手な希望を守るために。


小太刀の柄を握る指に力が入って、爪が食い込む。


その時。


座り込んでいる私の前に、黒い靴が止まった。


ゆっくりと顔を上げると、先生が静かに私を見下ろしていた。
目隠しの奥から向けられている視線が、痛い。


(……何から話せば、いいの?)


謝らなきゃいけないのに。
私が全部悪いんだと、伝えなきゃいけないのに。
頭の中がぐちゃぐちゃで、口が動かない。



「は? 怪我はない?」



降ってきた声は、いつもの私を気遣ってくれる先生のトーン。
それが今は、どんな罵倒より残酷に響く。


(怪我……)


自分の両手を見る。
泥にまみれているだけで、血は一滴も流れていない。



「……ない、です」

「そ、ならよかった」



先生はそう応えると、私の目の前にすっと右手を差し出した。
大きくて、綺麗な手。



「ほら、立って。帰るよ」
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