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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第22章 「可惜夜に眠る 中編**」


ズズ……、ズズズ……。



地鳴りみたいな、低く嫌な音がする。
足元のずっと奥深くから、這い上がってくるように響き始めた。



「……っ」



反射的に膝を少し落として、重心を低くした。


足元の泥が、不自然に波打つ。
まるで地面そのものが、意志を持って呼吸しているみたいだった。



「、来るぞ!」



虎杖くんの鋭い声が響く。
振り返ったその顔からは、さっきまでののんびりした空気は完全に消え去っていた。


腰の小太刀を鞘から引き抜く。
刀の冷たい金属音が重い空気を切り裂いた。


私たちの数十メートル先。
どす黒い土砂を撒き散らしながら、這い出してきた“それ”。


泥にまみれ、巨大でぶよぶよとした青白い肉体。
人間の腕を何本も継ぎ接ぎしたような歪な前足が、ずるずると重い泥を掻きむしっている。
顔があるはずの場所には、肉が無理やり引き伸ばされたような巨大な頭蓋骨が張り付いていて。
ぽっかり空いた暗い眼窩が、ぎょろりとこちらを向いた。


(……これが、準一級)


港で戦った呪霊とは、明らかに違う。
まとっている呪力の密度が濃すぎて、肌がチリチリ焼けるみたいに痛い。
強烈な土の匂い。
それに、腐った卵みたいな悪臭が混ざって、吐き気が込み上げた。



『グルルルルルううぅううッししししシイ……』



ひび割れた顎が、カチカチと不気味な音を立てて開く。
中から漏れる声は、言葉の形になりきらない。
だらりと垂れた長い舌から、泥と唾液が混ざったような粘液がボタボタと滴り落ちている。
それが、私たちを見下ろすようにそびえ立っていた。


(……あれに、押し潰されたら)

 
呪力で身体を強化できない私は――
考えた瞬間、背中がぞわっと冷える。



「俺が先に行く! は隙を見て頼む!」

「わかった……!」



虎杖くんが、ぬかるんだ足場を物ともせずに低く身を沈める。
彼の両拳に、青い呪力の光がバチッと走った。


泥を力強く蹴り上げる音がして、虎杖くんが弾かれたように呪霊へと飛び出していく。
私も小太刀を構え、虎杖くんの動きに合わせて斜め横へと走り出した。


(私は、私のやるべきことを……!)


あれの塊に近づいて、「送る」。
それだけだ。
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