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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第22章 「可惜夜に眠る 中編**」


***



「着きました」



伊地知さんがブレーキを踏み、車が砂利を噛んで止まった。
窓の外には、鬱蒼とした森と、朽ち果てた木造家屋の群れが広がっている。
木々の影が重なって、朝なのに薄暗い。



「うへー、雰囲気あるなぁ……」



隣で虎杖くんが窓にへばりついて言った。
私は膝の上で、小太刀の入った袋を強く握りしめる。
車内の冷房が効いているはずなのに、手のひらが汗でじっとりと湿っていた。



「はい、降りて降りて」



助手席のドアが開き、先生が伸びをしながら降りていく。
私と虎杖くんも慌てて後に続いた。


ムッとした湿気と、土の匂い。
そして――


(……いる)


メガネをかけていなくても、感じる。
空気の重さが、じわじわ皮膚に張りついてくる。


先生は車のボンネットに腰掛け、足を組んだ。
そして、廃屋の影を指差しながら、遠足のガイドみたいに説明する。



「場所はここ、旧・時雨村。ダム建設の予定地だったんだけど……立ち退き交渉の最中に、大規模な土砂崩れが起きてね。村の半分が、山の斜面ごと飲み込まれた」



先生が指差した方向を見ると、廃屋の奥に土砂に押し潰された一帯が見えた。
瓦や柱が、泥の中から骨みたいに突き出ている。



「ダムの基礎工事で地盤が緩んでいたこともあって、何十メートルもの土砂が堆積。二次災害の危険が高すぎたせいで……捜索は打ち切り」


(……え?)


不意に心臓を冷たい手で、掴まれたような気がした。



「今も何十人もの行方不明者が、あの土砂の下に取り残されたまま」

「突然家族を奪われた悲しみとか、無念とか。そういう負の感情が何年も溜まり続けて……呪霊の温床になっちゃったってわけ」



『取り残されたまま』
それって……まるで。
その言葉が、耳の奥で嫌な反響を繰り返す。



「そっか……」



隣で、泥に埋もれた廃屋を見つめていた虎杖くんが、静かに呟いた。
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