第22章 「可惜夜に眠る 中編**」
「のその『花冠の魔導』……わかってきたことも多いけど。まだ実戦じゃ使い物にならないでしょ?」
「……」
「等級に関係なく“送れる”のか。一度に何体まで可能か。応用の幅も見たい」
(……確かに)
あの港の呪霊の時は、ただ必死だった。
どうやってあの白い花を生み出して、どうやって花冠にするのか。
自分の中に、明確な「何か」があるわけじゃない。
あの時はただ、悠蓮の言葉に導かれるまま。
湧き上がる感情のままに、願っただけ。
それが再現できるかと言われたら……
先生の言うことに頷くことしかできなかった。
「先生、俺は俺は?」
虎杖くんが指で自分の顔を刺しながら、身を乗り出した。
「悠仁は、呪力コントロールだね」
先生は人差し指を立てて、悪戯っぽく片目を閉じた。
「あ、宿儺は出しちゃダメだよ? 絶対」
「お、おう! 分かってるよ!」
即答する虎杖くん。
先生は肩をすくめて、やれやれといった風に溜息をついた。
「もしの力が暴走して悠蓮が出てきて、そこに宿儺まで出たら。流石の僕も……二人同時に相手するのは、骨が折れるからね」
呪いの王と、謎多き魔女――悠蓮。
その二人が同時に暴れ回る光景を想像すると、確かにぞっとする。
伏黒くんと野薔薇ちゃんも同じことを考えたのか、げっそりした顔をしたのが見えた。
「ま、僕は勝つけどね」
先生はニヤリと不敵に笑って、さらりとそう言った。
「じゃ、二人は明日の朝七時にエントランス集合ね」
「遅刻しないようにー。おやすみ」
先生は、ひらりと手を振って背を向けた。
嵐のように現れて、嵐のように去っていく。
バタン、とドアが閉まる音が、静まり返った部屋に響いた。
後に残されたのは、呆気にとられた私たちと、重たい沈黙だけ。
「……ほんと、勝手な人だな」
伏黒くんが深いため息をつき、飲みかけのスポーツドリンクを置いた。