第22章 「可惜夜に眠る 中編**」
廊下を歩きながら、硝子さんの言葉が頭の中で反響する。
(……惚れてる、なんて)
(昨日は……きっと、イラついただけだ)
昨日のあの言葉が蘇る。
『の両親が見たら……どう思うんだろうね』
いつまでも過去に囚われて、ウジウジ悩んで。
立ち止まっている私が、面倒で、歯痒くて。
だから、無理やりにでも分からせるために――
ああしただけなんじゃないか。
『……一人で抱え込むなよ』
分かってる。
分かってる、けど。
あの日のことは、ずっと蓋をしてきた。
おばあちゃんにも、誰にも言っていない。
これは、私の問題だし。
先生に打ち明けたら、この罪悪感は消えるの?
(……ううん。消えちゃ、いけないんだ)
誰かに話して、自分だけ許されたり、楽になったりしちゃいけない。
だって、死んだ人はもう戻ってこれないのに――
「お、。もう体調はいいのか?」
「――ひゃっ!?」
不意に背後から声をかけられて、ビクッと体が跳ねた。
振り返ると、ジャージ姿の真希さんが立っていた。
「あ、ま、真希さん……!」
「なんだよ、そんな驚かなくてもいいだろ。……で? もう大丈夫なのか?」
真希さんが心配そうに、私の顔を覗き込んでくる。
思わずジャージの襟元を押さえた。
もうほとんど消えてるはずなのに、真希さんには見抜かれそうで。
「は、はいっ! もうすっかり元気です!」
「そうか。昨日は倒れたって聞いて心配したよ」
「朝飯まで暇でさ。ちょうど練習相手探してたんだ」
真希さんは担いでいた袋から竹刀を取り出し、私に向かって放り投げた。
「ほらよ!」
「わっ!?」
反射的に、差し出されたそれを受け止める。
真希さんはニヤリと笑って、
「病み上がりだ、軽めにしてやるよ。付き合え」
そう言って、自分の木刀を肩に担ぎ直した。