第22章 「可惜夜に眠る 中編**」
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翌朝。
カーテンの隙間から朝日が差し込む、演習所の仮設の医務室。
「……あんの、バカ」
私の首筋を覗き込んだ硝子さんは、開口一番、底冷えするような声でそう吐き捨てた。
「あ、あの……ごめんなさい、こんな……朝早くに」
その声に、つい背中が小さくなる。
昨日の夜、先生に言われた通り。
みんなと顔を合わせる前に、こっそりと硝子さんのところへ来た。
一応、“バレーの時の怪我”を診てもらうっていう名目なんだけど。
今、硝子さんの視線が刺さっているのは、怪我をした腕でも背中でもない。
「……謝るな。悪いのは全部、あのデカい子供だ」
硝子さんは深いため息をつくと、気怠げに前髪をかき上げた。
目の下のクマが、いつもより濃く見えるのは気のせいじゃないかもしれない。
「ったく……『激しくしちゃった♡』じゃないんだよ。加減を知らないのか、あいつは」
(……先生、言っちゃったの……!?)
顔から火が出そうだった。
硝子さんの視線が、もう一度私の首元に向けられる。
「これ、キスマークっていうか……半分、内出血してる。噛まれたろ?」
「っ……」
図星を突かれて、言葉に詰まった。
先生が残した無数の赤い痕。
それは、硝子さんの言う通り、キスマークとは言い難いほど赤黒くなっていた。
首筋だけでなく、鎖骨、胸元に近い部分まで。
硝子さんは呆れたように首を振ると、私の隣のパイプ椅子にドカッと腰掛けた。
そして、白衣のポケットから手を出して、私の首筋にそっと触れる。
「じっとしてて。……ちょっと、時間かかるかもな」
「……はい」
硝子さんの掌から、温かい光が溢れ出す。
けれど、その光が肌に触れた瞬間――