第22章 「可惜夜に眠る 中編**」
コンコン、と。
部屋の空気を裂くように、軽快なノックの音が響いた。
(っ……!?)
反射的に身体を強張らせた私を、先生がぎゅっと強く抱き込んだ。
「せんせー、いるー? 」
扉の向こうから聞こえてきたのは、虎杖くんの声。
(虎杖、くん……っ)
一気に血の気が引いた。
汗と涙でぐしゃぐしゃで、首筋には赤い痕だらけで。
服は乱れて、ほとんど裸みたいな姿。
もし、こんな姿見られたら――
先生を見ると、私の唇にそっと人差し指を当てた。
その目は焦るどころか、この状況を楽しんでいるみたいに細められている。
私を腕の中に閉じ込めたまま、先生は扉の向こうへ声を張った。
「どうしたの、悠仁?」
さっきまで私をあんなにめちゃくちゃにしていたとは、信じられないくらい。
いつも通りの、のんびりした声。
「俺ら、そろそろ合宿所戻るけど? あ、どっか行っちゃってて見当たんなくてさ。先生、知らない?」
「あー……なら、ここにいるよ」
(……っ!? なんで!?)
なんで、そこで正直に言うの。
「知らない」って、適当に笑って誤魔化してくれればいいのに。
「え、そうなの? なんで?」
「ちょっと疲れが出ちゃったみたいでさ。……寝ちゃったから、今、僕の部屋で休ませてる」
スラスラと嘘をつきながら、先生の手が私の背中をゆっくり撫で下ろしてくる。
背骨をなぞる指先の熱に、身体がびくりと震えた。
「マジ? なんか持ってくる?」
「いーや、大丈夫。日に当たりすぎたんでしょ」
「だから、悠仁たちは先に帰ってていいよ」
扉越しに会話が続くあいだも、先生はずっと口角が上がっている。
パニックになっている私を見て、面白がってるんだ。
いじわる。
「は、僕が面倒見るから」
「そっか。んじゃ先生、あと頼むわー。にお大事にって言っといて!」
「はいはーい。気をつけてねー」
パタパタと、廊下を遠ざかっていく足音。
私は両手で口を強く塞いだまま、じっとしていた。