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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第6章 「月夜、心を濡らす」


冷たい金属の床が背中に伝わる。
深く息を吸おうとするが、喉が詰まりそうだった。



「……すみません。びっくりしちゃって……」



自分でも驚くほど情けない声だった。
いまだに、あの日のことを思い出してしまう。
それが悔しくて、恥ずかしくて、五条の視線すらまともに受け止められなかった。


そのときだった。
何も言わず、隣に腰を下ろした五条が――


の手を、そっと包み込んだ。



「さっきの地震大きかったからね。……無理ないって」



いつもの笑みを浮かべながら、でもその声は不思議と深く、温かい。



「ま、そのうち復旧するでしょ」



彼の何気ない調子が胸に染み込んでいく。


(……あったかい)


繋がれた手が、心の奥まで温めていくようだった。
地震のことも、恐怖も――気づけばもう霞んでいる。



「……」



名前を呼ばれ、胸が跳ねる。
意識が、もう完全にこの手と、この距離に引き寄せられてしまっていた。


五条は少しだけ顔を傾け、真面目なトーンで言った。




「……しりとりしようか」

「……え?」



あまりに唐突すぎて、はぽかんとした。



「じゃあ、僕からね。――ごじょうさとるの“る”!」



勢いに飲まれ、は反射的に口を開く。



「……る、ルーレット!」

「トランプ!」

「……ぷ? プール!」

「ルビー!」



矢継ぎ早に返ってくる単語に、気づけば必死になっていた。






しりとりは思いのほか白熱した。



「……ホンコン!」



五条が自信満々に放った単語に、は思わず口を開く。



「それ、“ん”じゃないですか!先生の負け!」

「え? 英語でHONG KONG。最後はGだよ?」

「……無理があります!」

「じゃあはKINGKONGをキンコンっていうの?キングコングでしょ!」

「だからHONG KONGは“ホングコング”!」



と、それっぽい発音で言い切った。


必死すぎる主張に、は思わず吹き出した。



「何それ……もう! 先生の勝ちでいいですよ!」



観念したように言いながらも、笑いがこぼれる。


その声を聞いて、五条は少しだけ目を細めた。
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