第22章 「可惜夜に眠る 中編**」
「おっ、これが持ってきた牛タン?」
「あ、うん。幼馴染がお土産でくれたんだ。せっかくだから、みんなで食べようと思って」
「じゃ、遠慮なく焼こうぜ〜」
そう言ってパンダ先輩が網の上に、スライスされた牛タンを並べていく。
ジュウウウッ、といい音がして、脂が炭に落ちて煙が上がった。
「いただきまーす!」
「うまっ!」
「ツナ、ツナ」
みんながこうして美味しそうに食べてくれていると、なんだか嬉しくなる。
「……あれ、全然食べてないじゃん?」
パンダ先輩が私の皿をちらりと見て、そう言った。
「ほら、これ。おまえの分」
そう言って、焼きたての牛タンを数切れ、私の皿にのせてくれる。
「ここにあるもん、どうせ悟の奢りなんだから。遠慮すんな」
真希さんがグラスを片手に、そう言って笑った。
「しゃけ、しゃけ」
狗巻先輩も小さく頷いた。
「あ、ありがとうございます……」
私もひと切れ口に運ぶ。
サクッとした歯応えと、溢れ出す肉汁。
懐かしい味が口いっぱいに広がる。
(……おいしい)
仙台に遊びに行くたび、家族でよく食べた。
駅の近くにある、お父さんの行きつけのお店。
麦ご飯がおかわり自由で。
つい調子に乗って、何杯もおかわりしては、お母さんに呆れられてた。
『は本当に、牛タン好きだなあ』
『こーら、ゆっくり食べなさい。牛タンは逃げないから』
笑いながら言うお父さん。
困った顔でお茶を注いでくれるお母さん。
煙の向こうに、その光景が浮かぶ。
でも突然。
その笑い声が、ふっと遠ざかる。
(……あれ)
さっきまで温かかったはずの記憶が、どこかにじんで見える。
煙が濃くなったような気がして。
耳の奥で、遠くの波がざわざわと揺れた。
(……なんで)