第21章 「可惜夜に眠る 前編」
「あー……生き返るぜ……」
パンダ先輩が、温泉に浸かるおじさんみたいに肩まで海に浸かって、至福の表情を浮かべている。
その横で、狗巻先輩がパンダ先輩に水をかけていた。
「おかか! 高菜!」
「おいっ、パンダ! 向こう岸まで競争しようぜ」
真希さんは豪快に笑って海水を蹴り上げている。
さっきまで優雅にジュースを飲んでいた先生も、今はアロハシャツもサングラスも浜辺に投げ捨てて、本気で海遊びに興じていた。
濡れた白髪をかき上げ、太陽の下で無邪気に笑っている。
先生がふいに海中に潜った。
次にザバーッと顔を出したとき、
その手には、黒くてうにょうにょした奇妙な物体が握られていた。
「悠仁見て見て~! 獲ったどー!」
「うわっ、デカいナマコ!? キッショ!!」
先生はナマコをぷるんぷるんと振って見せて、虎杖くんと一緒になってお腹を抱えて笑っている。
先生、本当に28歳だよね……?
みんなの楽しげな声が、潮風に混ざって私のところまで届いてくる。
その光景を眺めながら、少しだけ視線を落とした。
(私は……砂浜で休んでようかな)
ふと目を向けると、少し離れたパラソルの下――
本を読んでいる伏黒くんの背中が見えた。
「伏黒くん、隣いい?」
声をかけると、伏黒くんが少しだけこちらを振り返った。
「……。怪我、大丈夫か?」
その問いに、私は自分の腕をさすった。
「うん、大丈夫。もう平気」
伏黒くんの隣に座って、海ではしゃぐ虎杖くんたちを眺めた。
「……あいつら、元気だな」
伏黒くんが、ぼそりと呟いた。
「ふふ、ほんとだね」
思わず笑みがこぼれる。
その時、足元の砂がもぞもぞと動いた気がした。
よく見てみると、小さな貝殻が一生懸命歩いている。