第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
「そんじゃ、いくぞ!!」
真希さんがボールを高く放り上げた。
そのフォームの綺麗さに、つい見惚れてしまう――と、思ったのも束の間。
ドンッ!!
風を裂く音とともに、砂が舞い上がった。
「……」
ボールが落ちた場所は、コートの白線のわずか数センチ外側。
隕石でも落ちたみたいにクレーターのように抉れていた。
「アウト〜! 一年生チームの得点!」
審判台に座った先生の、能天気な声が響く。
(……あれ、ボールだよね?)
あんなの、人間に当たっていいものじゃない。
当たったら、そのまま砂浜の向こうまで吹き飛ばされそう。
私が知っている「バレーボール」という爽やかなスポーツとは、明らかに種目が違う気がする。
(……もしかして、呪術高専ではこれが『バレー』なの……?)
私だけ、ルールブックが違うのかもしれない。
サバイバル?
これは命がけのサバイバルなの?
「チッ、力が入りすぎたか」
真希さんが舌打ちをする横で、虎杖くんがケラケラ笑いながら砂に埋まったボールを掘り出した。
「っぶねー! 今のアウトで助かったわ!」
虎杖くん、なんで笑ってられるの!?
「あ、あの……伏黒くん……」
私は震えながら、隣の伏黒くんの背中に隠れるようにして聞いた。
「こ、これ……当たったら、私……」
「死ぬな」
伏黒くんは真顔で、サラッと言い放った。
「だから無理に拾うなって言ったろ。はコートの端で、地蔵になってろ」
「じ、地蔵……! はい、私、お地蔵さんになります……!」
私はコクコクと何度も頷いて、コートの隅っこで小さくなった。
ボールが来たら、全力で逃げる。
そう心に誓った。