第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
「それ、ハリーポッターじゃねえか」
ポニーテールの女性が冷たくツッコむ。
すると、ずっと無言だった銀髪の先輩が、目を細めて口を開いた。
「こんぶ」
(……え? こんぶ?)
こんぶ……って、どういう意味……?
いや、きっと何かの術式用語かも……
もしかして、私が……こんぶっぽいとか?
それだったら、なんか地味にショック。
頭が追いつかず軽くパニックになりかけたそのとき、
「……、紹介する」
隣にいた伏黒くんが、ポニーテールの女性へ視線を向けた。
「禪院先輩。呪具の扱いなら高専で一番の使い手」
「恵、名字で呼ぶなって言ってるだろ」
不機嫌そうに言いながらも、視線はまっすぐこっちを見た。
「真希でいい。よろしくな」
「……はい。よろしくお願いします」
目つきは鋭いが、不思議と嫌な感じはしなかった。
(……先生が前に言ってた。私と同じ、呪力がない生徒がいるって……真希さんのことかも)
次に、伏黒くんが銀髪の先輩へ目を向ける。
「狗巻先輩。呪言師です。普段の会話は“おにぎりの具”のみ」
「ツナマヨ」
(呪言師……あ、だから、自由に話せないんだ……)
さっきの「こんぶ」も、そういうことだったんだ。
私のことじゃなかった……よかった……
「……で、パンダ先輩」
「よろしくな!」
伏黒くんの紹介が一瞬で終わった。
(……え、終わり!?)
思わず他のみんなに視線を送ったけど、誰も気にしてない。
虎杖くんは当然のように笑ってるし、野薔薇ちゃんも何とも思ってない顔。
(深く考えてはいけないのかもしれない……)
この一瞬で、また一つ“呪術高専の常識”を学んだ気がした。
……それより。
私も、自己紹介しなきゃ。
「……あのっ、といいます。よろしくお願いします!」
勢いで頭を下げた。
ちょっと早口になった気がする。
(今の、変じゃなかったかな……?)
おそるおそる顔を上げると、真希さんがふっと口角を上げていた。