第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
「――でさ、ビキニ派? ワンピース派?」
後方から、パンダ先輩のやたら元気な声が響いた。
「うーん、ビキニもいいけど……清楚なワンピースも捨てがたいっスね!」
虎杖くんが真剣に答えている。
「おっ、いいね〜。で、恵はどっち派?」
いきなり話を振られた伏黒くんは、わずかに間を置いて応じた。
「……俺に振らないでください。水着なんて、別に……」
「出た! むっつり! スク水派だな、これは」
「なんでそうなるんですか!」
伏黒くんの声が珍しく少しだけ大きくなった。
「棘は?」
「ツナマヨ」
「狗巻先輩はビキニ派か〜」
虎杖くんがうんうんと頷いている。
(えっ……“ツナマヨ=ビキニ”なの?)
私もいつか、狗巻先輩が言っていることがわかるようになるのかな。
「ちなみに! 私の完璧な水着姿はもちろん、のも超可愛いの選んだから! 男子共、泣いて感謝しなさい」
野薔薇ちゃんが、後ろの席から身を乗り出して言った。
「の、野薔薇ちゃんっ!?」
私が慌てて振り返ると、
「おっ、マジ? 楽しみー!」
「どんなのだよ〜」
「ツナ、ツナ」
歓声が広がって、後ろの席がわいわいと騒ぎ出す。
(うぅ……ハードル上げないでよぉ……!)
野薔薇ちゃんが選んでくれた水着は、確かにすごく可愛い。
でも、みんなの前で着るの恥ずかしくなってきた……!
その空気に乗っかったのか、パンダ先輩が調子に乗って声を上げた。
「ちなみに真希はどっちだ? やっぱ露出度高めのビキニ――」
「あ?」
ドゴォッ!と鈍い音が響いた。
「ぐえっ……」
「うるっせえぞ、パンダ」
真希さんの拳が綺麗に入ったらしい。 パンダ先輩が撃沈して、車内が一瞬静まり返る。
「朝からガキみてーな話しやがって。こっちは眠いんだよ」
ピシャリと静まり返る後部座席。
「はーい……」
「しゃけ……」
しょんぼりした声で後ろの三人が縮こまった。
……さすが真希さんだ。
たった一言(と一撃)で、この騒がしいメンバーを黙らせちゃうなんて。