第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
――コン、コンコンッ!
ドアを叩く音が、部屋に響いた。
「ー! いるのー?」
野薔薇ちゃんだ。
朝から来るなんて、どうしたんだろう……?
慌てて、パジャマの袖で目元をぬぐった。
「い、いるよ。ちょっと、待ってて」
声が少し上ずって、慌てて咳払いで誤魔化した。
ドアノブに手をかけ、唇の端を無理やり持ち上げる。
開ける前に、深呼吸を一つ。
(大丈夫。いつも通り、いつも通り……)
ドアを恐る恐る開けると、野薔薇ちゃんが腕を組んで立っていた。
今日は制服じゃなくて、カジュアルな私服。
野薔薇ちゃんの私服はいつも可愛い。
「……おはよう、野薔薇ちゃん」
「おはよ。っていうか何? 珍しいわね、あんたがまだ寝てるなんて」
「えへへ……夏休みだし……」
「寝癖、すごいわよ」
「えっ……」
思わず髪に手を当てると、野薔薇ちゃんが鼻で笑った。
「、私のメッセージ見てないでしょ」
(……あ)
スマホの通知が頭をよぎる。
さっき、確認しようとして結局見ていなかった。
「ご、ごめん……昨日、疲れて寝ちゃって……」
「はぁ。ま、いいわ。これから、原宿に買い物行くわよ」
「え、今から? 何の?」
「は? 水着に決まってんでしょ」
「……水着?」
思わず復唱すると、野薔薇ちゃんが盛大にため息をついた。
「あんた、聞いてないの? 明日からよ、明日!」
「え、何が……?」
「1、2年合同で4泊5日の夏合宿! 場所は――」
野薔薇ちゃんが、ぐっと身を乗り出してきた。
「五条家の別荘!」
「ぜーったい、プールかプライベートビーチあるに決まってんじゃない。水着、必須でしょ」
一気に距離を詰められて、私は思わず後ずさった。