第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
「こら、じっとしてなさい〜」
「うん……でも、くすぐったい〜」
こうして髪を触ってもらうの、好き。
お母さんの手って、やっぱり、あったかいな……
「ねえ、おかあさん」
「ん?」
「おかあさんって、魔法つかえるの?」
「えっ、なにそれ?」
私は指を折って数える。
「だって……おかあさんが作るパンは、すっごくおいしいでしょ。髪の毛もあみあみできるでしょ……それに、冬でも手があったかいもん」
そう言うと、お母さんはちょっとだけびっくりした顔になって、それからケラケラ笑った。
「バレちゃったか。お母さんは、実は魔女なのでーす」
「そうなの!?」
びっくりして、くるっと振り返ってしまった。
「こらこら、動かないの。ぐちゃぐちゃになるよ〜」
お母さんが、私の顔を元の向きに戻す。
「じゃあ……魔法で、もっとパンいっぱい出せる?」
「それは無理でーす」
「えー!」
私がふくれると、お母さんが私の顔を覗き込んできた。
「でもね、が笑ってくれる魔法なら、いつでもかけられるよ」
「ほんと?」
そう言った瞬間。
お母さんの手が、すっと私のわき腹にのびた。
「こちょこちょ〜」
「きゃっ……! それ、魔法じゃなーい!」
笑いながら体をよじると、お母さんが「バレたか」と言って手を引っこめる。
「ふふ。でも、笑ったでしょ?」
「……そうだけど〜」
そうやっておしゃべりしているうちに、最後のひと編みが終わって、きゅっと髪が結ばれる。
「はい、できた」
そう言って、お母さんが手鏡を渡してくれた。
サイドから編み込まれた髪が、後ろでひとつにまとめられている。
鏡に映った自分は、いつもよりちょっと大人っぽく見えた。
「かわいい〜!」
「今日の主役なんだから、ばっちり決めなきゃね」
「うん!」
そのとき――