第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
「うん!でもね、書きたいこといっぱいあって、夜までかかっちゃった!」
「だから、昨日寝るの遅くなっちゃったんでしょ」
お母さんが少し呆れたみたいに言って、でも口元は笑ってる。
「へぇ〜。なんて書いたの? お父さんに教えてよ」
「だーめっ! 先生がね、“お父さんとお母さんにナイショにしましょう”って言ってたもん」
ぷいっとそっぽを向くと、お父さんが「えー!」と大げさに嘆く。
私はパンをもぐもぐしながら、ふと思い出す。
「お父さんとお母さんも、にお手紙書いたんでしょ?」
「そうよー。だから、今日忘れずに先生に渡すのよ」
「はーい!」
「まだ読んじゃダメだぞ?」
「読まないよー!」
……ちょっとだけ、読みたいけど。
今日は、お父さんとお母さんが学校に来てくれる日。
みんなの前で、手紙を読むんだ。
お父さんとお母さんに、ありがとうって伝えるの。
練習のときはちょっと恥ずかしかったけど……でも、本番はきっと大丈夫。
だって、二人が来てくれるんだもん。
「おかあさん。今日、髪の毛、あみあみしてー!」
「はいはい。食べ終わったらね」
「うん!」
急いで食べなきゃ。
そう思って、パンをちぎって、もぐもぐ。
スープもごくごく。
「ゆっくり食べなさい。のどにつまるぞ」
お父さんが笑って言う。
「だいじょーぶ!」
そう言いながら、私はまた口を動かした。
「ごちそうさまでした!」
私が手を合わせると、お母さんが「よくできました」と言って、お皿を重ね始める。
「じゃ、髪やってあげるね」
お母さんが立ち上がって、私は椅子に座ったまま背筋をぴんと伸ばす。
やさしく指が私の髪に触れて、櫛がすっと通っていく。
「今日は、編み込みのハーフアップにしよっか。かわいくしてあげる」
「やったぁ!」
お母さんの指が、慣れた手つきで髪を編んでいく。
髪が引っぱられる感覚がちょっとだけくすぐったくて、笑いそうになる。