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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第20章 「君の心をさらったその日から**」


バスは、内湾の近くで停まった。
プシィ、とドアが開く音がした瞬間、湿気を孕んだ潮の匂いが流れ込んでくる。
乗客たちは次々と席を立ち、降車口へ向かっていった。



「よっこいしょ」



僕たちも、それに続いて立ち上がる。
先に僕がバスから降りると、目の前に気仙沼の景色が目に入る。


かつて津波に飲まれたこの地は、今やすっかり整備されていた。
広く舗装された道路、真新しい案内標識、低地には新しく建てられた防潮堤。
それでも、海のそばにはまだ空き地が目立ち、どこかぽっかりとした空気が漂っていた。



「いやー、空気がいいね」

 

僕はサングラスを外して、軽く背筋を伸ばした。
固まった身体をほぐすように、ひとつ大きく伸びをする。
その間に、も降りてくるかと思って振り返ると――
彼女は、バスの降り口の手すりに手をかけたまま、止まっていた。


 
「……?」

 

呼んでも、返事はなかった。
視線だけが、開いたドアの外を見つめている。
その表情がよく見えない。

 
運転手が不思議そうに眉をひそめた。

 

「お客さん、降りないの?」

 

その声で、の肩がぴくりと跳ねた。

 

「あっ……す、すみません……!」

 

足早に彼女はバスを降り、額の汗を手で拭った。
それから一度だけ、海のほうへ視線を流す。



「……暑いですね。思ったより」

 

そう言いながら、は小さく笑ってみせた。
思っていたより、いつも通りに見える。
 

(……ここまで来ても、何も言わないか。強情だな)

 
僕は彼女の横顔を見て、ため息をひとつ吐いた。


……でも。


(いや、僕が焦りすぎただけかも)


言葉にしないだけで。
言えないだけで。
の中では、ちゃんと進もうとしてるのかもしれない。


それなのに僕は、早く答えを出させたくて。
早く“僕のほう”に引っ張りたくて。


自分でも分かってる。
僕が踏み込めない場所に、いつまでも彼女が囚われているような気がして。
それが、気に食わなかった。
僕を見てほしい。ただ、それだけだ。


(これ、嫉妬ってやつ……?)

(しょーもな……さっさと呪霊祓って帰ろ)


そう思って、海沿いの通りへと歩き出そうとした、その時だった――
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