第20章 「君の心をさらったその日から**」
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東京駅で新幹線に乗って仙台に着いた頃には、お昼を過ぎていた。
夏の光が駅のガラスに反射して眩しい。
東北だからって、真夏は普通に暑い。
東京よりは少しだけマシ……な気もするけど。
改札を抜ける直前、の歩幅がほんの少しだけ遅くなる。
僕は何も言わずに、その手首を引いて歩いた。
「気仙沼まで、どうやって行くのが一番早い? のほうが、こっち詳しいでしょ」
を見ると、顔色は変わってない。
でも、どこか落ち着かない様子なのがわかる。
「えっと……電車もあるけど……高速バスが、一番早いと思います」
「じゃあ、それで行こ。 バスで腹ごしらえもしたいし、駅弁買ってから行こうか」
の返事を待たずに、駅弁売り場の方向へ歩く。
売り場の前に立つと、炭で焼いた牛タンの匂いが鼻をくすぐった。
ショーケースの中に、牛タン弁当の文字が見える。
「仙台来たら牛タンだよね」
当然みたいに言って、僕は一つ手に取る。
「は? やっぱ牛タン?」
が少しだけ目を泳がせる。
「あ、私は……いら――」
その続きが出る前に、僕はもう一つ取った。
「おねーさん、牛タン弁当二つ」
「はーい、牛タン弁当二つですね。ありがとうございます」
店員が手際よく包み始める。
は何か言いかけたけど、飲み込む気配がした。
視線を横に流すと、僕の好きな仙台スイーツが目に入る。
「喜久福はマストだよね」
白い箱を迷いなく取って、会計に追加した。
「も、これ好きでしょ」
返事はない。
視線だけが、どこか遠い。
「あと、ずんだシェイクも飲まなきゃね〜」
が黙れば黙るほど、僕はいつも以上に喋り続けた。