第20章 「君の心をさらったその日から**」
「せ、先生……?」
体を引いた反動で、スマホがの手から滑り落ちる。
シートの下で小さく鈍い音がした。
そのまま顔を寄せて、口を塞いだ。
唇を押し開くようにして、舌を滑り込ませる。
「……っ」
小さく漏れた声ごと、舌で押し込む。
触れた場所から、熱がじわじわ広がっていく。
薄い呼吸の隙間さえ、許したくなかった。
が身じろぎをするが、逃げられない。
その揺れが余計に僕の神経を煽る。
可愛い。腹が立つくらい。
唇を離すと、お互いの唾液が糸を引いて切れた。
「……っは、ぁ……」
は顔を真っ赤にして、肩で息をしていた。
潤んだ目が怯えるように僕を見上げている。
(そう、これ)
僕のことしか考えてない、その目。
その黒目に、僕の青が映ってる。
他の誰でもない、“僕”だけを見ている証拠。
シートの下に落ちたスマホの画面が、まだ薄く光っていた。
「……スマホ、落ちちゃったね」
拾おうと手を伸ばした瞬間、メッセージが目に入った。
【お父さんとお母さんも、お兄ちゃんに会えて喜んでると思う】
(……会えて、喜んでる)
その言葉が、妙に刺さる。
(また……ムカついてきた)
涼介に?
に?
それとも、こんなことで動揺してる自分自身に?
なんでこんな気持ちになるのか、自分でもよくわからない。
僕は電源ボタンを押して、画面を消した。
そして、そのままのスマホをシートに放り投げる。
「あ、あの……っ」
の頬に両手を添えて、正面を向かせる。
「こっち見て」
「せ、先生、どうし――」
言葉の途中で、もう一度唇を奪った。
舌をねじ込むように、さっきよりも深く押し入れる。
乱暴に、遠慮なく。
逃げようとした舌を追って、絡め取る。
「……っ、んっ……」
僕の胸を押し返そうとしていた手も、もう力が入っていない。
その手は、きゅっと僕の服を掴んでいる。
お互いの唾液が絡む音が車内に響く。
伊地知が手を伸ばして、ラジオのボリュームを二段階くらい上げた。
(ほんと、空気の読めるやつ)
角度を変えて、さらに続けようとしたそのとき――