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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第20章 「君の心をさらったその日から**」


「あ、伊地知さんかも……」

 

の声が、ほんの少しだけ軽くなる。
その変化が嫌でもわかってしまった。



「……ごめんなさい」

 

は一瞬だけ迷ったように僕を見て、そっと手を外した。

 
(……逃げられた)

 
責める気にはなれない。
きっと、にとっては“正しい選択”だったんだろう。

 
でも。

 
胸の奥に、置き去りにされた感じだけが残る。


(僕……なんで焦ってんの?) 
 

玄関のほうから、伊地知の声が聞こえた。

 

「おはようございます。五条さん、お迎えに――」

 

返事をする気になれなかった。
視線はさっきまでが立っていた場所に、落ちたまま。



「……五条さん?」

 

伊地知がもう一度だけ呼ぶ。
声が少しだけ慎重になっている。

 

「伊地知……」

 

伊地知が一瞬、固まった。
たぶん、僕の機嫌が“良くない”のが伝わったんだろう。



「いや。何でもない。さ、高専帰ろ」

 

僕はようやく顔を上げて、足早に玄関のほうへ歩き出した。







伊地知の運転する車は、ゆっくりと住宅街を抜けていった。


後部座席には、僕と。
間には、ほんの少しの距離。

 

「それにしても……」

 

伊地知が、バックミラー越しにちらっとこちらを見る。

 

「桃に牛タンまで……こんなに頂いちゃって、ほんとにいいんですか?」

 

助手席には、紙袋と段ボールが置かれている。
段ボールからは、桃の甘い匂いが微かに漂っていた。
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